2017/4/13

ポップアップストアでネットからリアルへ~ECサイト事業者が実店舗でチャレンジする意義~



Amazonが発表したレジのない店舗「AmazonGo」のニュースは、世界の小売業界に関わる人々を驚かせました。テストオープンが遅れているとのニュースもありますが、具体的にレジレス店舗の運営を行うと決断し、システムを開発しているところがAmazonの驚異的なところだと思います。

また、ネットで予約決済した商品を、実店舗へ取りに行くと、スタッフが車に持ってきて積んでくれるという「アマゾンフレッシュ・ピックアップ(AmazonFresh Pickup)」も発表されています。
こちらはウォルマートなどが先行しているドライブスルー型の店舗受取サービスで、Amazonもそれに追随する形です。配送と違い、利用者が自分で引き取りに行くため、物流業界の負担を少なくする試みであるともいえます。
しかし、もともと実店舗で全米に展開している小売業界の雄ウォルマートに、EC事業中心でスタートしているAmazonでは、実店舗の売上では太刀打ちできないのではないか?とも考えてしまいますが、逆にいえばEC業界を制したAmazonだからこそ、ネットからリアルに進出したといえます。

ECサイトのデメリットを解消する手段


元々実店舗を持たないECサイト運営企業が、実店舗で出店を行うメリットはどこにあるのでしょうか。
ECサイトのデメリットのひとつは「購入前に実際に商品を見ることができない」ことですが、そのデメリットを解消するために、「実店舗で商品を見てもらう」手段は有効です。
消費者が実店舗で商品を確認し、ECサイトで購入するという流れの消費者行動を「ショールーミング」といいます。
これはオフラインからオンラインへの送客となります。

参考:「ウェブルーミング」と「ショールーミング」に見る消費者行動傾向の変化

ECサイト運営企業がショールーミングを行ってもらうために実店舗を運営するという側面もあるのです。
その場合、常設店舗として出店するケースと、期間限定でポップアップストアを出店するケースが考えられます。

常設店舗での出店の場合は、不動産を取得したり、ショッピングモールや百貨店などに出店するなどが通常です。
それ以外でも、下記のような出店例があります。

飲食業界:ECモールが展開するカフェ・グルメスポット(日本)



楽天は宮城県にある楽天球団の球場に、ランキング一位を獲得した人気グルメが食べられる「楽天うまいものパーク」を出店しました。
これも実店舗の一つであり、ECサイトと野球という自社が持つコンテンツ同士をうまく組み合わせている例といえます。
楽天はもともと、渋谷と二子玉川にカフェを出店しており、楽天市場で人気のお取り寄せスイーツやドリンクを提供しています。
こちらは常設出店で、期間限定ではありませんが、売上ランキング上位の商品を実際に食べて気に入ったらその場でECサイトからネット注文することができます。
この常設店舗のノウハウを、楽天球場でもしっかりと活かしています。

http://event.rakuten.co.jp/rmagazine/umaimonopark/

交通業界:「駅」が繋ぐネットとリアル(日本)



JR東日本は、エキナカや駅ビルショッピングセンターなども運営し、鉄道会社でありながら小売業界でもその存在感をみせています。
駅の「不特定多数の人が集まる場所」という特色を活かし、コンコースでは期間限定のポップアップストアや地方の物産展などもよく出店しています。
JR東日本が東京の上野駅と秋葉原駅他で展開している「のもの」は、東日本の各地域から集めた商品を駅のショップや新幹線車内、ECサイトで販売しています。
「のもの」ブランドの認知も徐々に高まり、地方の企業や農家と共同開発したオリジナル商品が販売されるなど、今後も注目の店舗です。
駅と鉄道という「オフライン店舗」がネットにつながり、大きな小売ショップとなっている例です。

http://www.jreast.co.jp/nomono/

ポップアップストアのメリットと意義

さて、常設店舗に対して、「ポップアップストア」とは、どのような店舗なのでしょうか。
ポップアップストアとは、期間限定店舗のことです。
空きスペースや催事場に突然出現することから、「ポップアップ(突然起こる、突然現われる、の意味)ストア」と呼ばれます。
欧米では事前告知も行わず、いきなり出店することが多いようです。お国柄、その方が話題性が高いのだとか。
いつのまにかお店が現れ、期間限定で話題作りをして消えていく、イベント的な面が大きな出店方法です。

期間限定のポップアップストアは、アパレル関連業界や食品業界では一般的に行われている手法で、ECサイトではできない「手触りや着心地を確かめる」「味や匂いを確かめる」などの試着、試食ができることが特長です。
家電業界でも、機能性の高さやサイズ感を伝えるためにポップアップストアを出店する場合があります。
購入する前に商品について詳しく知ってもらうという重要な役目が果たされるのです。

ポップアップストアでの出店は、広告プロモーションを行う場としての意味合いも大きいですが、在庫を多く置かず、サンプル品に触れてもらい、後日ネットや実店舗で購入してもらうショールーミングに向いている店舗業態なのです。

通常の実店舗出店での運営よりも、当然ながら出店費用などの初期投資、さらに長期契約によるランニングコストが少なくて済むため、消費者に対して提案を行い、反応を見るテスト販売の場としても効果的です。
また、ポップアップストアの店内装飾やディスプレイ方法も企画意図に沿った明確なものにすることで、ユーザーによりスピーディーに商品イメージやブランドイメージを伝えることができ、ブランドイメージの認知度アップにも効果を発揮します。
最近ではスマホの普及によるSNSでの情報拡散もマーケティング戦略の一端を担っていますので、期間限定で話題性のあるポップアップストアの展開を行い、一気に商品やブランドの認知度を上げることも可能です。

スペースを貸し出す側の話題作り、集客にも一役買うことができ、百貨店など小売業界にもメリットがある手法となります。
百貨店の催事スペースで行われている地方物産展は、百貨店側が企画しているポップアップストア群といえます。
地方や海外のブランド・企業は、都市の一等地で自社ブランドを宣伝する機会を得られることになります。


ポップアップストアとオムニチャネルの親和性

ポップアップストアは、ECサイト事業者と消費者の接点の一つといえます。
ポップアップストアを期間限定でも出店することでオムニチャネルの一角を担うことができ、しかも様々なメリットを内包しているのです。
ECサイトでは足りない「体験」の部分を補い、話題性を生むことで認知度を高めることができるため、ポップアップストアはオムニチャネルとの親和性が高いのです。

では、どのようなポップアップストアが話題となったのか、国内外の事例を見てみましょう。

アパレル業界:デジタルとリアルを融合させたアパレルブランド(イギリス)


世界でも上位の売上を誇る小売企業「テスコ(Tesco)」が手掛けるアパレルブランドF&Fは、ロンドンのコベントガーデンに期間限定でポップアップストアを出店しました。
ポップアップストアにレジを設置せず、欲しい商品は消費者がiPadでECサイトから購入する形を取りました。
ポップアップストアに並んでいる商品にはQRコードがついており、そこから購入すると割引される仕組みで、きちんとオンラインへの導線を作ってあるのもポイントです。
また、バーチャル試着やAR技術を活用したバーチャルランウェイなど、デジタルとリアルを融合させる試みも行われ、話題となりました。

https://www.tesco.com/direct/

アパレル業界:多彩なブランドのファミリーセールを楽しめる(日本)

ニューヨーク発の「GILT」は、様々なブランドの商品を、ファミリーセール価格で提供するECサイトです。
2016年の年末から表参道ヒルズに5週限定でポップアップストアを出店しました。
1週ずつの期間限定で陳列するブランドを入れ替える手法で、ECサイトの特色をポップアップストアでアピールすることに成功しています。
ポップアップストアでECサイトの会員登録をすると特典が付いたり、新作コレクションに特典が付く新サービスのアピールの場ともなりました。

https://www.gilt.jp/stores/women

コンテンツ業界:ここでしか買えない!レアなキャラクターグッズ(日本)


LINEが販売しているスタンプのキャラクターグッズが買えるポップアップストアが全国のロフトに出店した例では、期間中ロフトのポップアップストアでのみ購入が可能でした。
このように、その場所でしか買えないことも付加価値となるため、購買意欲を高め、売上向上を見込めます。
消費者にとって「期間限定のポップアップストアに行く」メリットは、そこでしか得られない体験であり、バリューなのです。
さらに、その後ECサイトでも購入が可能となり、「ポップアップストアには行けなかったけどECサイトでは買えた」利用者にとっては、顧客満足度が高まる効果も生まれるでしょう。

https://linecorp.com/ja/pr/news/ja/2015/1077

アパレル業界:まるで脱出ゲーム!?壁をよじのぼって新商品をゲット!(韓国)



アウトドアブランドのThe North Faceが韓国で出店した「ドッキリ」なポップアップストア。
最初は普通のお店だったのに、スタッフが外に出てスイッチを押した途端、床がスライドして壁に追い詰められ、ボルダリングの壁を登る…体験者の、何が起こったのかと驚いている表情にドキドキさせられます。
Youtubeでの動画再生回数は1,200万回を超えており、話題性の高いポップアップストアプロジェクトでした。
ポップアップストアは期間限定でも、動画コンテンツとして残ることでブランド認知は継続する好例です。
このように、SNSでの拡散が話題となるケースですが、The North Faceは毎年こうした試みを行っていて、VRで犬ぞり体験をした後、本当に犬ぞりがショッピングセンターの中を駆け巡ったり、回転する試着室から出ると氷漬けの新商品があり、氷から制限時間以内に取り出すなど、あっと驚く企画が人気のブランドです。

眼鏡業界:スクールバスで主要都市を巡回!移動ショールーム(アメリカ)


アメリカの「Warby Parker」は、最初ECサイトからスタートし、実店舗を持つに至ったというストーリーを持つ眼鏡ブランドです。
アメリカの主要8都市で実店舗を持つブティックなどに期間限定ショールームという形のポップアップストアを出店、認知度を高めていきました。
また、ユニークなアイデアなのが改造スクールバスを利用した主要都市を巡る「移動ショールーム」。半年間という期間限定で、キャラバンツアーを行い、話題を集めました。
期間限定、神出鬼没というところがまさにポップアップストアの特長をとらえています。

https://www.warbyparker.com/

通販業界:話題の商品をゲットしたい!猫好きが集まる期間限定ショップ(日本)


通販業界でもポップアップストアは活用されています。
フェリシモが猫好きの人をターゲットにしたブランド「猫部」では、定期的に期間限定ショップを全国展開しています。
フェリシモの通販システムは、会員登録して商品購入をすると、毎月一回違ったデザインやカラーリングの商品が届く定期便という仕組みです。
どれが届くか分からないワクワク感と、コレクションする楽しさがある購買方式といえますが、ピンポイントでこの商品だけほしい!というニーズも当然あるでしょう。
そうしたニーズに応えるのが実店舗やポップアップストアなどの期間限定ショップです。
一度お試しでポップアップストアで購入し、その後定期便でリピート購入するなど、利用者にも購入方法の幅が生まれる効果があります。

http://www.nekobu.com/

時計業界:地方や海外ブランドの認知度アップに貢献するポップアップストア(日本)


オランダの時計ブランド「CLUSE」の正規通販サイトは富山県の企業が運営しています。
東京表参道のヘアサロンが貸し出しているスペースに期間限定ポップアップストアを出店し、認知度アップに一役買いました。
ヘアサロンでの委託だったため、販売員を派遣しなくても出店が可能というケースです。
表参道にあるヘアサロンの来店客はファッション感度が高く、マーケティングリサーチの場としても最適だったようです。

https://www.luce925.com/

まとめ

オンラインからオフラインへ、オフラインからオンラインへ。
オムニチャネル、O2Oといった新しい送客の方法は、もはや実店舗とECの境界を越えて融合しつつあります。
期間限定のポップアップストアは多数あるマーケティング戦略の一環として、ECサイト事業者が検討する価値のある一つの手法であると感じます。
消費者はECサイトで買う前に商品を確認でき、ECサイト事業者は消費者と顔を合わせて接客して反応を見ることで、ECサイトの運営に反映するなど、メリットを活かして売上向上を目指せるでしょう。
ECサイト、実店舗双方を含めた小売業界の底上げに有効な手段といえます。

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